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静止型ミキサー“分散君”における分散質の拡散に関する研究

世古口言彦

世古口 言彦Sekoguchi Kotohiko

大阪大学名誉教授
株式会社フジキン 顧問

  • 1956年 大阪大学工学部機械工学科卒業
  • 1961年 大阪大学工学部機械工学科博士課程修了
  • 1961年 川崎重工業(株)勤務
  • 1973年 九州大学工学部教授
  • 1975年~1980年3月 動力炉・核燃料開発事業団非常勤委託兼務
  • 1985年 大阪大学工学部教授
  • 1988年~1992 日本原子力研究所 研究嘱託兼務
  • 1997年 大阪大学名誉教授
  • 1997年 香川職業能力開発短期大学校校長
  • 2000年~2002年6月 四国職業能力開発大学校校長
  • 2002年 (株)フジキン顧問
  • 2002年~2005年5月 社団法人生産技術振興協会理事長
  • 2007年4月~2011年 (株)フジキン 首席取締役
  • 2011年 (株)フジキン 技術顧問

2011年7月28日発刊
「ながれをこえて」Vol.10で掲載。
配属部署、役職は発刊当時のものです。

1. はじめに

フジキンミキサー“分散君”の内部における分散質の拡散特性に関する解析アルゴリズムが創案された機会に、その基本的な考え方と解析事例とを紹介する。

この解析手法を用いると、分散器内のすべての分散孔における分散質配分率を求めることができる。例えば、呼び径25の場合に20枚の分散板を使用するとすれば、分散孔の数は250個となるが、これらの個々の孔における分散質配分率を決定することが可能である。また、呼び径が50では分散孔の数は1090個にもなるが、同一の手法で解析することができる。本報ではその解析方法の要点を披露することに重点を置き、呼び径25に対象を絞って解説する。紙数の関係で、25以外の呼び径を対象としたスケール効果に関する議論については別の機会に譲る。

2. 分散君の流路構成

分散君には標準口径として5種類(呼び径15、25、32、40、50)があり、それぞれのサイズに対応して絞り孔の数と配列が選定されている。絞り孔が穿孔されている分散ディスクは、2枚が一組となっていて、上流側のディスクをフロントディスク(以下ではFDと書く)、下流側のそれをバックディスク(以下ではBDと書く)と称している。図1.に呼び径25の場合を例示する。

図1. 一組のフロントディスク(FD) とバックディスク(BD)の孔の配列図とFDからの噴流a0、c0、k0がBDに衝突し、分岐する3つのパターンの説明図

図1. 一組のフロントディスク(FD) とバックディスク(BD)の孔の配列図とFDからの噴流a0、c0、k0がBDに衝突し、分岐する3つのパターンの説明図

図において、絞り孔の直径は2mm(長さ1mm)で、絞り孔の入口側には直径6mmから2mmまでのテーパのついた絞り部(長さ2mm)と、出口側にはこれを反転させた2mmから6mmまでの拡張部(長さ2mm)とがあり、ディスクの厚さは5mmである。

FDの絞り孔から出た噴流はBDの壁に衝突したあと、図1の矢印のように2つ、3つ、または4つに分岐し、FDの他の絞り孔から分岐してきた噴流と合流してBDの絞り孔に流入する。従って、分岐数2、3、及び4に対応して流れのルート数が2、3、及び4の3種類存在することになる。次いで、BDからの噴流も同様の分岐・合流を経て、下流側のFDの絞り孔に流入していく。この場合には、分岐数が3と4(ルート数が3と4)の2種類だけになる点が異なる。

孔の位置によって流れのルート数が相違することについては、図2.に示されているような絞り孔の配列図を利用すると判り易い。図2.は図1.に例示した呼び径25の一組のFDとBDの例で、孔数はFD(白色)が13個、BD(青色)が12個である。

図2. 分散孔の配列図

図2. 分散孔の配列図

図には上から3行に分けて孔のアドレス、ルート数、分散質配分率の各記号が記されている。孔のアドレスについては、分散器の入口に位置するFDにディスク番号1を与え、このFDと一組を構成するBDのディスク番号を2とし、それ以降のディスクに通し番号を付けている。各ディスクにおける分散孔にも通し番号を付け、FDとBDにおける孔のアドレスをFν#n及びBν#m(ν:ディスクの通し番号、n及びm:FDとBDの孔の通し番号)と表している。FDに付けるνは奇数で、BDのそれは偶数となる。ただし、特にディスク番号を明記する必要がない場合には、νを記すことなく、単にF#n及びB#mと書く。

次に、FDとBDの孔のルート数をそれぞれRF#n(n:0~12)、RB#m(m:1~12)と書く。この場合、ディスク番号を省略しているのは、ルート数が孔の番号のみで決まるという理由による。図において、FDのアドレスF1#0、F1#1、F1#3、F1#5及びF1#7の孔に接しているBDの孔数はそれぞれ4であるから、これらのルート数RF#0、RF#1、RF#3、RF#5、及びRF#7はいずれも4ということになる。また、他の孔についてはRF#2、RF#4、RF#6、及びRF#8は3で、残りのRF#9、RF#10、RF#11、及びRF#12は2となり、FDには3通りのルート数があることが分かる。他方、BDの孔についてはRB#1~RB#4が4、次いでRB#5~RB#12が3の2通りがある。

このようにルート数の構成はFDとBDで異なるが、図2.におけるルート数の合計は両者とも同数の40となっている。FDとBDとでディスクの孔数が違っていても、ルート数の合計が同じであることは、呼び径が25の場合に限らない。呼び径50では孔数が57と52で、FDが5個も多くなっているが、ルート数はいずれも196で同数となっている。

分散君の内部における分散質の分布状態を定量的に表現するために、分散質配分率、すなわち分散器に流入する分散質のうち任意の分散孔が占める比率を用い、アドレスFν#nとBν#mに対してそれぞれNFν#n及びNBν#mと記す。分散器内のすべての孔における分散質配分率の分布を知ることによって、当該分散孔への分散質の供給が適切に行われているかどうか、ひいては分散効果が有効に発揮できる状況にあるかどうかが判断できる。

3. 分散質の拡散解析アルゴリズムとそれを用いた解析例

FDに流入する分散質が流路断面内で偏った分布をしている場合、分散君の内部において分散質がどのように拡散し、均斉な分布へと移行していくかを予測するための解析アルゴリズムを導出する。

解析では次の仮定を設定している。

  • (1) 分散器の入口に面するFDの各孔への流入流量(分散媒と分散質の合計流量)は一様である。
  • (2) FDからBDへの流量と分散質の配分はルート数に比例する。
  • (3) BDからFDへの流量と分散質の配分比率は、前段のFDのアドレスF#nの孔からBDの当該孔(アドレスB#m)に流入した流量比率(K比率と名付け、KF#nB#mと記す)と同じ大きさとなり、分散質の配分比率も同じとなる。

BDの各孔の流量は仮定(1)と(2)から、一様であり、その大きさはFDの値の(13/12)倍であることが導ける。ここで、(13/12)はFDとBDの孔数の比になっている。

3-1. FDとBDの各分散孔が有する分散質配分率の相互関係

ディスク番号1のFDにおけるアドレスF1#nの孔を通過する分散質の配分率をNF1#n、ルート数をRF#nとすると、仮定(2)によってNF1#nはRF#nの数に等分され、連通しているディスク番号2の孔に流入する。いま、n=0のアドレスを有する孔、すなわち図2.の中央の孔を対象とすると、NF1#0は、ルート数RF#0=4の数に等分され、(NF1#0/RF#0)=(NF1#0/4)の大きさでディスク番号2のアドレスB2#1~B2#4の孔に配分される。これらの孔にはF1#0以外のF1#1~F1#8からも分散質が流入することを考慮すると、各孔における分散質配分率NB2#1~NB2#4は次式のようになる。

  • NB2#1 = NF1#0/RF#0+NF1#1/RF#1 + NF1#2/RF#2 + NF1#3/RF#3     (1)
  • NB2#2 = NF1#0/RF#0+NF1#3/RF#3 + NF1#4/RF#4 + NF1#5/RF#5     (2)
  • NB2#3 = NF1#0/RF#0+NF1#5/RF#5 + NF1#6/RF#6 + NF1#7/RF#7     (3)
  • NB2#4 = NF1#0/RF#0+NF1#7/RF#7 + NF1#8/RF#8 + NF1#1/RF#1     (4)

上式の右辺に含まれているルート数に、図2.の数値を代入して整理すると、次のように表すことができる。

  • NB2#(1,2,3,4) = (1/4)・{NF1#0 + NF1#(1,3,5,7) + NF1#(3,5,7,1)}+ (1/3)・NF1#(2,4,6,8)     (5)

BDの他の孔への分散質配分率NB2#(5~12)も同様の方法で導出することができ、結果を式(5)の形式で表すと次のようになる。

  • NB2#(5,7,9,11) = (1/4)・NF1#(1,3,5,7) + (1/3)・NF1#(2,4,6,8) + (1/2)・NF1#(9,10,11,12)     (6)
  • NB2#(6,8,10,12) = (1/4)・NF1#(3,5,7,1) + (1/3)・NF1#(2,4,6,8) + (1/2)・NF1#(10,11,12,9)     (7)

以上の式(5)~(7)を用いることによって、分散器の入口のディスク番号1における各孔の分散質配分率から、その下流側のディスク番号2のすべての孔における分散質配分率を算出することができる。このようにして算出されたディスク番号2の結果を用いて、ディスク番号3の分散質配分率を決定する手法を次に述べる。

最初に、ディスク番号3の中央の孔、すなわちアドレスF3#0における分散質配分率を決定する式を導出する。

仮定(3)に基づき、NF3#0は連通するディスク番号2のアドレスB2#1~B2#4の分散質配分率NB2#1~NB2#4と、次式のように関係付けることができる。

  • NF3#0 = KF#0B#1・NB2#1 + KF#0B#2・NB2#2 + KF#0B#3・NB2#3 + KF#0B#4・NB2#4     (8)

上式のKF#0B#1~KF#0B#4は、仮定(3)で定義されているK比率であり、その算定の1例をKF#0B#1について示す。定義によれば、K比率はアドレスB2#1の流量に対するアドレスF1#0からアドレスB2#1への流量の比であり、仮定(1)と(2)によって次式のように表される。

  • KF#0B#1 = (1/RF#0)/(1/RF#0 +1/RF#1 + 1/RF#2 + 1/RF#3)     (9)

KF#0B#1はルート数の関数となっており、ルート数はディスク番号には依存せず、孔の番号のみで決まることから、K比率の記号にはディスク番号は省かれている。図2.で示されているルート数を式(9)に代入すると次の結果を得る。

  • KF#0B#1= 3/13     (10)

式(8)に含まれる他のK比率も同様の方法で求められ、KF#0B#1と同じ3/13の数値が得られる。これらの結果から、式(8)は次のようになる。

  • NF3#0 = (3/13)・(NB2#1 + NB2#2 + NB2#3 + NB2#4)      (11)

以上の解析過程から、ディスク番号3における任意のアドレスの分散質配分率は、当該分散孔に連通するディスク番号2の分散孔の構成によって変わることが分かる。その構成パターンは図2.から上記の例(ルート数がすべて4の場合で、これをグループ (0)とする)のほかに、次の3つのグループが見出される。

すなわち、図2.について仕分けをすると、

  • (1) (F1#1、F1#3、F1#5、F1#7)、
  • (2) F1#2、F1#4、F1#6、F1#8、
  • (3) F1#9、F1#10、F1#11、F1#12

となり、それぞれのグループの分散孔に連通するBDのルート数の組み合わせは、グループ (1):(3,3,4,4)、グループ (2):(3,3,4)、及びグループ (3):(3,3)となっている。これらのルート数を用いることによって、式(9)と(10)の場合と同様の方法で3つのグループに対するK比率が求められる。

このようにして得られたK比率をまとめて示すと、次のようになる。

  • グループ (0):KF#0B#(1,2,3,4) = 3/13     (12)
  • グループ (1):KF#1B#(1,4,12,5) = KF#3B#(1,6,7,2) = KF#5B#(2,8,9,3) = KF#7B#(3,10,11,4) = 3/13     (13)
  • グループ (2):KF#2B#(1,5,6) = KF#4B#(8,2,7) = KF#6B#(9,10,3) = KF#8B#(11,12,4) = 4/13     (14)
  • グループ (3):KF#9B#(5,12) = KF#10B#(6,7) = KF#11B#(8,9) = KF#12B#(10,11) = 6/13     (15)

ディスク番号3のすべての分散孔における分散質配分率が式(12)~(15)を用いることによって求めることができる。グループ (0)に属する孔は孔番号0のみで、アドレスF3#0に対するNF3#0についてはすでに式(11)が導出され、その解析過程が説明されている。他のグループについても同様の手法で解析することによって、以下の結果を導出することができる。

グループ (1):

  • NF3#1 = (3/13)・(NB2#1 + NB2#4 + NB2#12 + NB2#5)     (16)
  • NF3#3 = (3/13)・(NB2#1 + NB2#6 + NB2#7 + NB2#2)     (17)
  • NF3#5 = (3/13)・(NB2#2 + NB2#8 + NB2#9 + NB2#3)     (18)
  • NF3#7 = (3/13)・(NB2#3 + NB2#10 + NB2#11 + NB2#4)     (19)

グループ (2):

  • NF3#2 = (4/13)・(NB2#1 + NB2#5 + NB2#6)     (20)
  • NF3#4 = (4/13)・(NB2#8 + NB2#2 + NB2#7)     (21)
  • NF3#6 = (4/13)・(NB2#9 + NB2#10 + NB2#3)     (22)
  • NF3#8 = (4/13)・(NB2#11 + NB2#12 + NB2#4)     (23)

グループ (3):

  • NF3#9 = (6/13)・(NB2#5 + NB2#12)     (24)
  • NF3#10 = (6/13)・(NB2#6 + NB2#7)     (25)
  • NF3#11 = (6/13)・(NB2#8 + NB2#9)     (26)
  • NF3#12 = (6/13)・(NB2#10 + NB2#11)     (27)

以上の式によってディスク番号3のすべての分散孔における分散質配分率が決定できる。次に、ディスク番号4については、式(5)~(7)に含まれるパラメータのディスク番号を1つずつ大きくした式に書き換えて用いることができる。また、ディスク番号4に続くディスク番号5についても。式(11)及び式(16)~(27)のパラメータのディスク番号を1つ大きくすればよい。このようにして、使用される最終のディスクまでの式が導出できる。

3-2. 分散質配分率の解析例

分散器に流入する分散質の分布の相違に対応して分散器内の個々の孔における分散質配分率がどのように変わるかを予測することは、以上の議論によって可能となった。ここで、分散質が壁面近傍に位置している1つの分散孔に集中して流入した場合に、器内のすべての孔が呈する分散質配分率の推移について解析した結果を提示する。

解析条件は、呼び径25、FDとBDがそれぞれ10枚、従って、ディスク番号が1から20で構成された分散器で、分散質がF1#9の分散孔に流入するとする。解析結果を図3.に示す。

図3. 分散質が壁面近傍(F1#9)に集中して流入した場合の分散質の拡散特性

図3. 分散質が壁面近傍(F1#9)に集中して流入した場合の分散質の拡散特性

図中の○は、奇数のディスク番号において分散質が流入したF1#9と同じ孔番号を有する分散孔の配分率であり、☐と△は参考のために選んだ管の中央のFν#0と壁面近傍のFν#11(F#9の対極にあるアドレス)のそれぞれの配分率を示している。その他のすべてのアドレスにおける配分率は小さな黒い点で表されている。なお、対称に位置しているアドレスの点がほぼ半数重なっているため、プロットされている点数は少なくなっている。

○と同レベルで変化している黒い点は、Bν#5とBν#12の値であり、Fν#9とルートを共有するBDの分散孔である。これらの3つのアドレスの分散孔の配分率がどのディスク番号においても上限を占めている。これに対してFν#9の対極に位置するFν#11とこれとルートを共有するBν#8とBν#9では、前者がディスク番号ν=7まで、後者がν=6 までそれぞれ零で推移しており、これらが下限となっている。

図には比較のためにFDとBDに対する平均値が◇と◆で示されている。ここで、平均値は、FDとBDが有する分散孔の数の逆数、すなわち1/13=0.0769及び、1/12=0.0833である。管中央の値を示す□はν=9で平均値の◇と重なっている。□を境にして上方に位置する点の数と下方のそれとは、下方のほうがやや多い。

νの増加に伴っていずれの点も平均値に向かって収束していくが、ν=19、及び20においてFDについては±40%、またBDについては±30%程度の幅の中にある。呼び径25としては、図3.の分散質の流入位置(F1#9)が、配分率の収束に最も多くのディスク枚数を要する場合であり、他の流入位置からの場合には、収束がこれよりよくなることがあっても悪くなることはない。例えば、管の中央に流入する場合の解析結果では、ν=10、及び11でほぼ収束している。

3-3. ディスク毎の分散質の充足率に関する定義と解析例

分散器のすべての分散孔に、所要の大きさの分散質が配分されることが望ましいが、分散質の流入条件によっては配分されない分散孔が数多く出現したり、配分率が零でなくても十分とはいえないことが起こったりする可能性を図3.は示唆している。1つのディスクが有する全分散孔を対象とした分散質の配分に関する評価パラメータとして、 “分散質の充足率ηFν及びηBν”を以下のように定義する。

まず、分散質の配分率が考えているディスク番号νにおいて平均値よりも下回っている偏倚量をすべての分散孔について求め、その合計をFDについてはξFν、またBDについてはξBνと書く。FDとBDに対する分散質の平均配分率を<NF>と<NB>と記し、上記の定義によってξFνとξBνを次式のように表す。

  • ξFν = {Σ(<NF> - NFν#n)、(“>0”)}     (28)
  • ξBν = {Σ(<NB> - NBν#n)、(“>0”)}     (29)

ここで、上式の右辺は、( )の中の差が正の値をとる分散孔について合計することを意味する。1枚のディスクについて、各分散孔の分散質配分率の総計は1であるから、1とξFν及びξBνとの差を当該ディスクの分散質の充足率ηFν及びηBνとする。すなわち、次式で決定される。

  • ηFν= 1 -ξFν     (30)
  • ηBν= 1 -ξBν     (31)

図2.で説明した分散器において、分散質の充足率がディスク番号νの増加とともにどのように変わるか、またその変化が分散質の流入条件によって受ける影響について調べた結果を図4.に示す。

図4. 各ディスクにおける分散質の充足率と分散質の流入条件との関係

図4. 各ディスクにおける分散質の充足率と分散質の流入条件との関係

壁面近傍の1個所(図中の凡例(ⅰ)と(ⅱ))、壁側の3個所(ⅲ)及び5個所(ⅳ)の分散孔から流入する場合の充足率の増え方は、流入孔の数にかかわらずいずれも緩やかに1に漸近していく。充足率が70%程度に達するには、ディスク番号5ないし9を経なければならない。

これに対して、分散質が管の中央 (ⅴ)、管の中心を囲む4箇所(ⅵ)及び中心線上の3箇所(ⅶ) に流入する場合は、充足率が急上昇し、ディスク番号が2ないし3で70%に達している。

以上のように、分散質の流入条件の相違によって充足率が大きく変わることは、分散器内における拡散特性を考慮に入れた配管システムの設計、並びに取り扱いの重要性を意味している。また、図3.及び4.の解析結果は呼び径25に対するものであるが、拡散問題には空間の大きさが不可分であることから、管径の大きな場合についての解析を深化させることが、分散君の有効活用の上で枢要になるものと考えられる。

4. あとがき

分散君の特色は、異なった配列を有する分散孔で構成された2枚の多孔板が一組となり、3つのパターンから成る分岐・合流で特徴付けられた明確な流路(本文では“ルート”と称している)を形成している点にある。そのため、全体として複雑に思われる流路であっても、本報で導出したような、ルート数に基づいた分散質の拡散に関する解析アルゴリズムを構築することができる。その意味において、本解析を“分散君”における分散質の拡散に関する“ルート数理論”と命名する。

今後はこの解析手法を既存の標準的分散器に適用し、分散質の種々の入口条件に対する拡散特性をより詳しく理解することによって、最適設計の推進に寄与しうる設計資料の蓄積と充実が望まれる。更には、適用の対象を既存の要素寸法に限定することなく、分散器の上流近傍の流線に与える影響と器内の上流領域における拡散との関係に着目した研究に活用することによって、分散器とその上流側を含めたシステム設計の向上に寄与できると考える。

謝辞 “分散君”を創案されました久保建二 博士(工学)(前 ㈱ フジキン顧問)から、本研究に対して大変貴重なご助言を頂戴しましたことを明記し、感謝の意を表します。また、㈱フジキン会長 小川洋史 様には、本技報への寄稿に際して、種々ご高配を賜りましたことに厚くお礼を申し上げます。

参考文献

[1]
ながれとともにながれをこえて、(株)フジキン、P.17- P.21、vol.5、2006.01
[2]
西野敦、他「大容量キャパシタ技術と材料Ⅲ」、CMC出版、2006.07.31