製品情報

新静止型流体混合器・分散器

小路克利

小路 克利Shoji Katsutoshi

株式会社フジキン
製造創造本部 大阪工場
技術開発センター 混合・分散技術室
主務補佐

  • 1998年 富山大学 工学部 化学生物工学科 卒業
  • 1998年 株式会社 フジキン 入社

2008年12月28日発刊
「ながれをこえて」Vol.7で掲載。
配属部署、役職は発刊当時のものです。

化学工学会「技術賞」とは

化学工学に関する技術または化学関連産業に関して業績のあった個人もしくは5名以内の共同研究・開発者に贈与される賞である。その年に、化学関連の産業技術の進歩や発展に著しく貢献のあった新しい技術2~5件が選ばれ、表彰されるものである。

(株)フジキンの新静止型ミキサー“混合君 ”・“分散君 ”が斬新性、効率の良さ、使いやすさ等の製品の優秀性に加えて、化学工業の多くの単位操作機器の効率良い代替品、または補助機器としての無限の可能性が評価され平成20年3月化学工学会技術賞を賜りました。

1. はじめに

混合・分散技術は流体を扱う“ものづくり”では最も基本的な操作で最も古くから行われてきた技術の1つである。混合とは、広義の意味で互いに溶け合うものを混ぜて均質化することで、また分散は、互いに溶け合わないもの(例えば水と油等)において一方を他方へ細かな粒子にして、見かけ上あたかも混ざっているような状態を創り出す操作である。混合·分散は古くから培われてきた技術だけに、従来から行われてきた容器内に撹拌翼を入れ、それを回転させることによって行う方式がほとんどである。そのため容器、撹拌翼、翼を回すモーターならびにその接続などさまざまな発展を遂げてきた。

しかし、化学、食品、医薬、環境関連等多くの製造過程で効率を上げるために連続操作ができるように機器が発展してきたが、なぜか混合・分散過程のみがバッチ操作になっており連続生産の弊害になっている。

連続混合ができる混合機としてはリボン型やハニカム型等の静止型ミキサーがあるが流量が多くなると装置が大きくなりスケールアップが難しい、複雑であるなど欠点があり、通常の撹拌型のものに比べるとその普及率はまだまだである。

2. 製品の概要

「混合君」・「分散君」(以下本器)は、静止型ミキサーとして小型化と性能向上により、混合・分散分野の連続プロセス化を目指すと共に、製品の生産効率を上げ、コストの大幅引き下げを図るだけでなく、瞬間混合が可能であることから、混合後瞬時に起こる化学反応等、バッチ式撹拌機では従来達成することができなかったプロセスを実現できる装置である。

本器は厚さ5mmの円盤に、流路となる孔を開け、孔の配置をずらした円盤2枚を1組のエレメントとして用い、必要に応じて複数組をケーシングに装填し配管へ接続して使用する混合・分散器である。

エレメントの種類は、孔の形が格子状でかつテーパを設け、流体の分割と速度変化で混合を促進する「混合君」と、孔の形が杵型を有し、強制的な流体の衝突により、乳化や分散まで可能である「分散君」の2種類がある。ケーシングは、各種規格に合わせたフランジ接続式や、サニタリークランプ接続式等、客先の仕様に合わせたものを製作できる。

一例を図1、2に示す。

図1 クランプ接続式混合君概略図

図1 クランプ接続式混合君概略図

図2 各種ケーシング

図2 各種ケーシング

3. 特長

3.1 静止型ミキサーの特長

静止型ミキサーは、機械的撹拌機に比べ、駆動部を持たないためトラブルが少なく、また撹拌タンクが必要ないため省スペース化でき、操作は連続的に行え、しかも流体がミキサーを通過することにより、必ず一定の混合分散効果を得られるなど、様々な利点がある。

3.2 本器の特長

本器は静止型ミキサーの特長を活かし、分散装置として優れた性能を持ち、かつ混合装置としても優れた性能を持つ。さらに、構造が簡単であり、接触面積を増大させる効果があることから、吸収、反応、抽出、溶解、粉砕機等としても利用できる、という特色がある。

① 分散装置(分散器)として優れている点は次の通りである。

  • 1. 平均粒子径 0.3-600μmの範囲で分布幅の狭い優れた分散ができる。
  • 2. 粒子径は本器エレメントの細孔を通過する流速のみで決定される。
  • 3. そのため適切な細孔径をもつエレメントの選択、 あるいは流速を制御するだけで、 簡単に粒子径がコントロールできるので、 希望の粒子径をもつ分散がラボスケ ールでも生産スケールでも簡単に創ることができる。(図3)

図3 流速変化による粒子径分布

図4 Ta(OC2H5)5の熱分解特性

② 混合装置(混合器)として優れている点は次の通りである。

  • 1. コンパクトである。
  • 2. 取り付け、 取り外しならびに分解が容易で、 洗浄性が良い。
  • 3. 高圧にすれば粘度の高い(数Pa·s)ものも一瞬で混合できる。
  • 4. 強いシェアをかけた混合ができるため、 粉砕(だまとりを含む)ができる。

4. 混合・分散機構

4.1 混合君エレメント(図4)の混合機構

① エレメントの孔が格子状正方形配列をしており、上下の配列が異なっていることで、流体は4分割される。

② 前のエレメントで分割された流体が、次のエレメントで合ーされる。

③ 流体は、エレメントのテーパにより広い隙間から狭い隙間を通過し、再び広い隙間に流れる。流体が4分割されるとともに、急激な速度変化と圧力と変化が発生し、流体が混合される。

4.2 分散君エレメント(図5)の混合・分散機構

① エレメントの孔が杵型を有し、上下の配列が異なっていることで、流体は4分割される。

② 流体が最小孔部を通過する際、孔壁との摩擦(剪断力)によって混合・分散を促進。

③ 流体が次のエレメントに入る際、必ず衝突し、それに伴い渦が発生し混合・分散を促進。

図4 混合君エレメント(左) / 図5 分散君エレメント(右)

図4 混合君エレメント(左) / 図5 分散君エレメント(右)

5. 応用事例

5.1 エマルジョン燃料

「混合君」・「分散君」は、単なる混合や分散だけではなく、物質移動、熱移動、反応など多くの応用事例がある。

例えば、近年、環境問題や燃料高騰により再び注目を集めているエマルジョン燃料製造への活用が有望視されている。

エマルジョン燃料とは、燃料に水を分散させ乳化したもの(エマルジョン)、もしくはその逆で水に燃料を分散させたもので、農業用や船舶用ボイラーの燃料として重油エマルジョンは実用化されてきている。これは不完全燃焼の起こりやすい重油が、水の水蒸気として急膨張することにより微細化されることで霧状に分散され、結果、不完全燃焼を抑え燃費がよくなり、さらには、二酸化炭素、窒素酸化物の発生を抑制することにつながる。

しかし、まだまだ問題点も多く、エマルジョン燃料は水と混ぜても、時間がたつと分離してしまうことや、乳化剤のコストが高くなること、水分が設備の腐食の原因になったりすることなどがある。

これら問題点を解決するためには、性能の高いミキサーが必要となり、かつ、省スペース、省エネルギー、メンテナンスレスの連続生産可能な静止型ミキサーの活用が望まれている。

5.2 その他の事例

① 混合・・・濃縮還元ジュースの製造、酸ーアルカリ溶液の中和、豆腐の製造など

② 分散・・・各種エマルジョン、乳化物の製造

③ 溶解・・・増粘剤の水への溶解、粉末薬剤の水への溶解など

④ だまとり・・・チョコレート、バター、ヨーグルト、クリームなどの製造

⑤ 温水の製造・・・スチームと水の混合

⑥ 再分散・・・酸化チタンの再分散など

⑦ 抽出・・・トマトからのリコピンの抽出

⑧ 植物繊維の分散・・・パイナップルジュースの繊維の分散

⑨ 気液反応...気液反応プロセスの性能アップ

⑩ 熱交換器の性能アップ・・・熱交換器の熱伝達低減の回避による効率アップ

⑪ 有機物の分解・・・化学工業廃棄物である有機物の分解効率のアップ

⑫ 窒素による脱酸素水の製造

6. 最後に

現在、撹拌槽を用いて行われている混合・撹拌、分散・乳化、溶解、反応のうち半分は本器に変更することが可能である。

例えば、液-液系混合では簡単にプロセスの連続化ができることから大幅な高効率化が期待できる。また、中和反応など反応速度の速いものでは混合反応装置として用いることができる。本器は乳化分散装置としても優れていることから、連続乳化重合反応装置としても効果を挙げている。

納入実績においても、バッチ操作から連続操作になったものが117件(納入実績の79%)あった。このように、現在バッチとなっていることの多い撹拌槽を用いた操作が連続プロセスとすることができれば、場合によっては日を跨ぐプロセスが数分で終えるような生産時間の大幅短縮が可能で、生産時間の短縮は電力低減、省エネにもつながる。

さらに本器は、粒子径をコントロールした分散ができることから抽出装置としても利用できる。固-液系では固体の投入方法に注意が必要であるが、撹拌·溶解を効率よく行うことができる。また、接触面積を増やし、物質移動を早める効果があることから塔型の反応、吸収、抽出装置等に代わる装置として使用することができる。既に溶解5件、反応18件、抽出2件、粉砕2件の納入実績がある。

また、それらの装置の前後に設置したり、それらの装置を含む循環系の一部に本器を設置したりすることで効率アップが図れるので、前記装置の補助装置としても用いることができる。

特に、既存の装置の改良、改善策としての利用を考えると非常に応用範囲の広い装置である。