製品情報

半導体用バルブ・継手のこれまでとこれから

山路宮治雄

山路 宮治雄Yamaji Michio

株式会社フジキン
上席常務取締役 常務執行役員
わざづくり(技術)部門 技術本部長
南大阪フジキン株式会社 取締役
博士(工学)

  • 2014年 論文「電子デバイス製造用ガス供給バルブの高性能化に関する研究」高信頼性高温バルブ(NHD)

ウルトラクリーン化の概念の追求

今回の講義は、「半導体用バルブ・継手のこれまでとこれから」というテーマで、まずフジキンのシェアを紹介した後、バルブと継手の変遷について説明いたします。

最初にフジキンのシェアについてですが、業界専門誌『ガスレビュー』からの引用によるもので、エレクトロニクスガス分野向け日本国内市場となります。1970年代後半プロセス用のバルブはほとんど外国製でした。これに対してフジキンでは元々、国内のファシリティ用として禁油用のバルブを手がけていました。そして、1981年にプロセス用エアー弁(ベローズ弁)を開発しました。半導体業界のスペックに基づき、1985年にはシリンダー弁を開発、1988年にダイレクトダイヤフラムバルブ(メガ-1)を次々に開発しました。さらに1985年にバルブ内面の研磨処理技術(UP処理)を開発したことで、業界シェアを徐々に上げてきました。1990年代になると、メガ-1から派生したメガ-MINIなどを開発し、2010年頃にはシェアが最高の70%に達しました。2015年時点でも60%のシェアを維持しています。

なお、FCG®(Fujikin Carp Group)のバルブ開発では、東北大学教授の故大見忠弘先生が自著を通じて発表された「ウルトラクリーン化の概念」が大きく影響しています。そこでは、バルブを含めて半導体製造装置に使用されるすべての機器類はこの概念が根本原理となっています。大見先生が提言されたのは、パーティクルフリー、外部リークフリー、デッドスペースフリー、アウトガスフリー、接ガス実効面積の極小化、誤動作フリー、耐腐食性、非触媒性の8つの項目です。FCG®においても先生の概念に基づいて、半導体用バルブの設計思想を定めて、バルブ開発を進めて来ました。

パーティクルの徹底排除に挑戦

FCG®のバルブ技術ポイントについて、まず内容積が最小のバルブができた背景として、独自のカシメ技術の開発が挙げられます。これはステムに樹脂材料を取り付け、バルブシートを形成するものです。従来はステムにバルブシートをカシメていましたが、バルブボディに、樹脂材料を取り付け、専用工具で変形させ、高圧仕様にも耐えられるように強固にカシメる技術を開発しました。

次にバルブ技術ポイントのガス置換特性です。当初、特性を評価する装置がなかったために自社で独自に開発しました。ガス置換特性とは、最初にAというガスを流していて、その後ガスを切り替えてBというガスを入れます。その際、Aがどれだけ早くBに切り替わるかを見るテストです。Bガス中のAガス濃度を測定して評価するものです。

これによって評価したところ、ダイレクトダイヤフラムバルブではおおよそ70~80秒ぐらいで10ppmまで下がることが判明しました。バルブの代わりにステンレスのチューブを取り付けた場合と比較すると、ダイレクトダイヤフラム構造とチューブとは値がそれほど変わらない。すなわちガス置換特性が良いわけです。結論として、ダイレクトダイヤフラム構造にすると、ガス置換特性はストレートチューブと同等レベルを実現することができたのです。

次にクリーン化についてですが、「バルブに関するパーティクルは2種類しかない」と考えています。その一つが、バルブの中に入っているパーティクル、すなわち付着残留パーティクルです。加えて、バルブの中から発生するパーティクルの2種類です。そこでメーカーの責任としては、「存在するパーティクルを極力少なくする」「パーティクルの発生を極力少なくする」「発生したパーティクルは、除去しやすくする」という点から、内表面部分の粗さを改善したわけです。具体的には、バルブ内表面粗さをRmax.0.3μm以下に研磨する技術(UP処理)を開発しました。

もう一つのポイントは、パーティクルが抑えられたといっても、実際に製品を出荷するときにパーティクル保証ができなければ意味がありません。そこでバルブ専用のパーティクル測定装置を独自開発しました。従来の測定系では、バルブ開閉に伴う等速吸引技術が確立されていなかったため、実態とは異なるパーティクルをカウントする結果となっていました。

これに対して、バルブ専用パーティクル測定装置では、二重配管等専用装置を開発したことで、バルブ1開閉あたりのパーティクル数を正確に測定することが可能になりました。現在、各工場の最終出荷の際、本パーティクル測定装置による全数検査を行っています。

シール部分と外力を分けた継手の開発

次に継手についてお話しします。半導体向けとして1979年にF900を開発し、1981年には信頼性と脱着性を向上したUJRを開発しました。さらに1995年初めに小型化と信頼性向上、デッドスペースフリーを実現したUPG®を開発しました。その後、2013年に開発したiPGではパーティクル混入防止形状やデッドスペースフリー形状、過剰締付け防止形状を実現しています。

UPG®の開発経緯については、1992年大見先生から「今の継手は完璧でない。シール部分と外力を分けた継手をつくりなさい」というご指導を受け、改良を重ねました。当時、UJRを改良した小型継手の構想を検定していたので、先生のご指導内容を盛り込んだ継手をMINI-UJRとして提案しました。実際に評価試験をしてみると、大見先生のコンセプトがとても優れており、抜群の評価結果となりました。先生のご指導を頂きながら、さらに改良を重ね、3年後の1995年初めにUPG®として完成しました。

その後、東日本大地震の際、東北大学のスーパークリーンルームでUPG®を採用されていましたが、リークは1ヵ所もありませんでした。そして、UPG®は、現在では水素ステーション用超高圧継手や半導体用新型iPG 継手に使用されています。

バルブの変遷一覧(全般)

バルブの変遷一覧(全般)

世界を視野に集積化ガスシステム(IGS®)のスタンダード化を達成

WシールとIGS®の開発経緯ですが、まずWシールについて、1995年当時、次世代のガス系は他社開発の「集積化ガスシステム」に全て替わると言われており、FCG®の出番はないとされていました。信頼性の高いガスシステムにするには、単体機器をブロックに取り付けるボルト式のシールが数百個もあるため、信頼性の高いシールの開発が不可欠と考えました。その際、UPG®継手の開発が1994年に終わり、非常に低いトルクでシールすることが確認できていたため、そのシール部を機器のサーフェスマウント部に採用しようと考えました。設計試作して、評価試験を実施しました。他社が採用していたCシールに比べ、非常にシール性に優れた信頼性の高いシールであることが判明しました。そのシールをWシールと命名しました。

継手の変遷

継手の変遷

一方、IGS®の開発は1995年から1997年にかけて行いました。Wシールは完成していたものの、IGS®のコンセプトが当時はまだ貧弱で、お客様の評価では「先行する他社に2年は遅れている」と指摘されました。これに対して、1996年に緊急の技術開発ミーティングが開催されました。その際、経営トップから「先行他社に負けないものを創れ」の激が飛んで、全社一丸となって取り組み、上部脱着式のシングル弁2方、3方の組み合わせTYPE3、全機器完全上部着脱式のTYPE4を次々に完成させました。これによってIGS®は他社と同じぐらいの水準になりました。

時を同じくして、北米でIGS®のスタンダードが作成されて「モジュラーコンポーネントタスクフォース」が発足しました。FCG®もタスクフォースに参加しました。そこで各種シールが検討され、Wシールを始め、複数のシールがスタンダード化されました。さらに2000年になって、お客様としては「2つのIGS®を標準にできない」ということで、お客様とFCG®と他社の計3社で統一型IGS®をつくることになりました。最終的にFCG®のWシール、DVD(デッドレス)ブロックバルブ等が標準になりました。統一されたIGS®が完成したことにより、他社でもWシールがつくれることになりましたが、特許のあるガスケットはFCG®から購入して頂いています。

集積化ガスシステム(IGS®)の出荷状況ですが、2016年で6,416台を出荷し、累計では65,796台となっています。

クリーンテクノロジーのさらなる追求

最後に、これからの製品ということですが、半導体業界では大見先生が提唱されたウルトラクリーンテクノロジーが今後も非常に重要であると考えています。

お客様からのご要求として、まず、バルブの開閉で流量をコントロールしたいとの考えで、機差低減のご要求があります。 安定した流量を確保するために、定速応答、高再現性を持つ製品となります。

次に、ナノパーティクルへの対応です。目標は1開閉につき、0.1個以下/0.01μmのご要求があります(従来は1開閉につき、0.1個以下/0.1μmです)。

最後に、低蒸気圧のガスを大量に送るため、Cv値をできるだけ大きくして、さらに耐久回数を上げて欲しいとのご要求もあります。

開発のハードルはどんどん高くなりますが、飽くなき挑戦を続け、新技術の開発を通して、今後も半導体分野で高シェアを維持していきたいと考えています。